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エア マックス 95~98にみるトータル3世代の進化の系譜

ナイキスポーツウェアが近年エアマックス95に次ぐアイコンとして育成してきたエアマックス97及び98は、その手厚いリリースの甲斐あって、いまやスニーカー市場でも大いに支持を得ています。そもそもエアマックス97は、シルバーメッシュに赤いスウッシュを刺繍したオリジナルカラーが復刻される度に即完売するほどの人気モデルでしたが、かたやエアマックス98は認知度もイマイチで、支持を得られるか否かは未知数でした。そこでナイキが起爆剤としてドロップしたのがSUPREME共同製作のエアマックス98。これを機にマーケットの潮目が一変したことは言う迄もありません。果たして、エアマックス95からエアマックス97、エアマックス98へと至るゾーンを確立したナイキスポーツウェアは、続々と多彩なバリエーションを展開しています。

最新のラインナップについては追って報告するとして、ここではエアマックス95~98のオリジナルが発売されたフォール95~レイトスプリング98の3年間に焦点を当て、エアマックスがいかなる進化を遂げたかーーその歴史的な背景と経過を詳述します。

今を遡ること23年前、エアマックス史上最大のヒットを記録したエアマックス95は、ナイキ・ランニングカテゴリーよりフォール95のニューモデルとしてデビュー。以降、ホリデー95、スプリング96、レイトスプリング96まで4期に渡って新作がリリースされましたが、圧倒的な支持を集めたのはファーストカラー、通称「イエローグラデ」でした。人体の骨格や筋肉組織をモチーフに造形されたエアマックス95は、それだけでも異質な存在でしたが、加えてグレーのグラデーションに蛍光イエローの挿し色といったランニングシューズらしからぬカラーリングを採用したのはなぜでしょうか?歴代のエアマックスとあまりに懸け離れたデザインの意味は?

なぜならエアマックス95はシリーズ誕生以来の劇的な進化を遂げたモデルだからに他なりません。即ちエアマックス史上初の前足部にビジブルエアを搭載したことで、前足部+後足部のトータルな領域にマックスエアを配した記念すべきエポックメイキングなのです。それゆえ既存のエアマックスとは一線を画したデザインとカラーリングのインパクトが求められたという背景がありました。

このフォアフットマックスエア+デュアルプレッシャーエアという前後ビジブル化を実現したエアマックス95をエアトータルマックスの第1世代(fig.1)と呼びます。その由来については、当時のナイキ本社でエアマックス95のデザイナー、セルジオ・ロザーノ氏を取材した際、デザイン画に記されていたコードネーム「AIR TOTAL MAX」によるもの。ちなみに、インラインの展開終了後にリリースされたエアマックス95のリミテッドエディションが「AIR TOTAL MAX SC」名義だったことにも繋がります。

fig.1 Air Total Max 1st Generation (Fall 95~Late Spring 96)

こうして幕を開けたエアトータルマックスの進化は瞬く間に次のステージへ……。エアマックス95に次いで、フォール96~ホリデー96に展開されたエアマックス96は、デュアルプレッシャーエアの低圧部(クラッシュパッド)を斜め向きに配置換えしたマイナーチェンジ仕様。ランナーがかかとから着地して、つま先で蹴り出すまでの足の動きを解析し、かかとの斜め外寄りに接地ポイントを設定したのがデュアルプレッシャーエアの改良版です。これとフォアフットマックスエアを組み合わせたツーリング(ソールユニット)は、スプリング97~レイトスプリング97発売のエアマックス96.2にも引き続き採用され、ここまでがエアトータルマックスの第2世代(fig.2)に当たります。

fig.2 Air Total Max 2nd Generation (Fall 96~Late Spring 97)

そして、フォール97~ホリデー97発売のエアマックス97には前足部と後足部のチャンバーを一体化したフルレングスビジブルエアが搭載され、エアトータルマックスは第3世代(fig.5)へと進化を遂げました。ヒールの斜め外寄りに着地の衝撃吸収を担うクラッシュパッドを配し、ミッドソールの外周をチューブ状に連結したエアバッグは、史上最大のボリュームによるクッショニングの向上はもちろん、ミッドソールのフォーム使用量を大幅に削減することで軽量化にも貢献しています。この革新的なマックスエアは、スプリング98~レイトスプリング98発売のエアマックス98にも受け継がれ、アッパーのデザインを変更したトータル第3世代のバージョン2という位置付けでした。

fig.3 Air Total Max 3rd Generation (Fall 97~Late Spring 98)

ナイキがエアマックスの最終形態として目標に掲げていた360°ビジブルエアないしフォーム素材から解放されたエアバッグ100%のミッドソールは、2006年発売のエアマックス360を契機に達成されてきましたが、その前段で大きな役割を果たしたのがエアトータルマックスなのです。ミッドソールの前後にマックスエアを搭載し、前後に分割されていたエアバッグを一体化したエアトータルマックスの歩みは、その後のエアマックスの進化に様々な示唆を与えたことでしょう。そんなエポックメイキングだからこそエアマックス95からエアマックス98へと至る劇的な進化が今なお注目され、新たなバリエーションの増殖に繋がっているのは間違いありません。

NIKE AIR MAX 95 SE
人体をモチーフにデザインされたエアマックス95のトゥガードやオーバーレイにJust Do It.ロゴの総柄プリントをアレンジ。純白仕上げの透明感のあるツーリングが映えるスペシャルエディション。 

NIKE WMNS AIR MAX 95 SE
トゥガードとオーバーレイをペールトーンのモザイク柄で彩ったエアマックス95のウィンメンズモデル。淡いグレーのレザーアッパーにスペックル仕様のミッドソールを組み合わせたシーズナルカラー。

NIKE AIR MAX 97
波打つラインにリフレクティブなパイピングが層を成し、フルレングスマックスエアを搭載したエアマックス97より、モノトーンカラーで塗り分けられたアッパーにバイオレットを挿すニューカラー。

NIKE AIR MAX 97
ブルーメッシュのベースに流線形を描いたウルフグレーのオーバーレイとイエローの挿し色が映えるエアマックス97。フルレングスマックスエアを搭載したトーナル第3世代のバリエーション。

NIKE AIR MAX 98
今年デビュー20周年を迎えた波のラインが特徴のエアマックス98より、モノトーンカラーのアッパーに疾走感溢れるレーサーブルーと蛍光イエローを挿すニューカラー。

NIKE WMNS AIR MAX 98
流線形のオーバーレイにリフレクターのパイピンッグをあしらったエアマックス98より、オリジナルを彷彿させるモノトーンカラーにソーラーレッドの挿し色を利かせたウィンメンズカラー。

NIKE AIR MAX 98 QS
トータル第3世代の後継機として波状のデザインやフルレングスマックスエアを踏襲したエアマックス98より、オーロラグリーンやグレープを配色したケミカルなリミテッドエディション。

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岸 伸和

Nobukazu Kishi Exclusive


  1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。今秋にはWTAPS®ブック第2弾を刊行予定。

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UNDEFEATED / アンディフィーテッド

Web:http://undefeated.jp/

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