23. NIKE SHOXの過剰なメカニカルデザインがむしろ支持されるスニーカー市場の現在

 

 

NIKE SHOXが復活の鬨の声をあげた。ここに紹介する4型のSHOXは、まさに復活の予感を確信に変えた2019年リリースのニューモデル。それぞれ詳細については追い追い触れるが、SHOXに共通する近未来的なデザインやメカニカルなソールユニットが現代のスニーカーファンに支持されていると云う。ここではその原点を探るべく、NIKE SHOX誕生の経緯から辿っていこう。

ナイキがミレニアムイヤーの2000年に満を持して発表したNIKE SHOXは、衝撃吸収性の最大化を追求してきたNIKE AIRに対し、弾むような反発エネルギーの創出をテーマに開発されたクッショニングシステムである。その起源は意外にも古く、エアマックス誕生以前の80年代半ばにまで遡る。

ナイキエアフォース1の生みの親として知られるフットウェアデザイナーのブルース・キルゴアが1984年に発想したあるアイデアからNIKE SHOXは始まった。大胆にもミッドソールにスプリングコイルを組み込み、その反動で推進力を獲得しようと目論んだ奇想天外なプランがそれだ。この理論を具現化したモックアップまで製作されたが、アスレティックシューズとして実用化するにはあまりに時代を先取りし過ぎていた。その後、16年の歳月を経て遂に完成したNIKE SHOXは、衝撃吸収したエネルギーを蹴り出しの反発力に変換するウレタン系特殊素材のコラムをミッドソールに搭載。アッパーの踵を支える円柱形のコラムはまるでパルテノン神殿のエンタシスを彷彿させた。

fig.01 Original Idea of Nike Shox (1984)

 

NIKE SHOXの第1世代が産声を上げた2000年はシドニーオリンピックの開催年にあたり、バスケットボール米国代表のヴィンス・カーターが着用したSHOX BB4を皮切りに、ランニングシューズのSHOX R4、クロストレーナーのSHOX XTをアルファプロジェクトより相次いでリリース。

プレート状のアウトソールに4個のコラムを配置した前衛的なデザインがスニーカー市場の話題をさらったのは言う迄もない。ただ、スニーカー市場で成功を収めたか否かは別問題である。次いで、当時サービスを開始して間もないNIKE iDに登録されたSHOX NZもまたこの新しいテクノロジーを広く周知するのに貢献したと言えるだろう。

fig.02 Nike Shox BB4 (2000)

fig.03 Nike Shox R4 (2000)

fig.04 Nike Shox XT (2000)

fig.05 Nike Shox NZ (2000)

 

だが、同時期にアルファプロジェクトよりエアプレストをはじめエアズームサイズミックやエアクキニといったエポックメイキングをいくつも輩出していたナイキの好況ぶりを踏まえると、SHOXシリーズがそのポテンシャルを存分に発揮していたとは言い難い。それ以降もNIKE SHOXの進化をアピールすべくフルレングスにコラムを配置した2003年発売のSHOX TL、ヴィンス・カーターのシグネチャーシリーズであるSHOX VCでさえもスニーカー市場を席巻するほどのヒットには繋がらなかった。

fig.06 Nike Alpha Project circa 2000; Air Presto (2000), Air Zoom Seismic (2000), Air Kukini (2000)

fig.07 Nike Shox TL (2003)

fig.08 Nike Shox VC 2 (2003)

 

本来、NIKE AIRと双璧を成すはずだったNIKE SHOXがスニーカーファンの支持を得られなかった背景を個人的な主観で分析したところ、主に3つの要因が浮上した。

その一、スニーカー市場のパラダイムシフト。90年代半ばのスニーカーブームを牽引したハイテクスニーカーが徐々に求心力を失う一方で、ナイキダンクの復刻に象徴されるオールドスクールが台頭。00年デビューのSHOXにとっては逆風の中での旅立ちとなった。

その二、ハイテクデザインの変遷。00年代初頭はたしかにハイテクスニーカーにとって試練の時代だったが、エアプレストやエアサイズミックなどエポックメイキングが登場したのも事実。進歩的なテクノロジーをシンプルなデザインで表現したハイテクモデルは支持を得られたようだが、その点でSHOXはあまりに機能美を主張し過ぎていたかもしれない。

その三、NIKE AIRの多様化に霞むSHOXの存在意義。衝撃吸収の最大化をテーマに進化を遂げてきたNIKE AIRだが、90年代後半にはマックスエアと別路線のズームエアを導入開始。薄型のエアバッグが衝撃吸収性と反発性を兼ね備えたズームエアは、反発弾性に主眼を置くSHOXのお株を奪うテクノロジーと言えなくもなかった。

これらの要因が絡み合った結果、NIKE SHOXは次世代のクッショニングシステムとしての認識を得られぬまま、徐々にスニーカーファンの主要なテリトリーから逸脱。NIKELAB発のSHOX TL MIDなど特殊な場合を除き、いつしかNIKE SHOXのリリースは途絶えたかに見えた(日本市場では上述の通りだが、欧米市場ではSHOX NZなど断続的にリリースされていた)。

fig.09 Nike Shox TL Mid SP “Iridescent” (2014)

 

ところが、2018年にSHOX名義のニューモデルが突如発売され、にわかにスニーカー市場でNIKE SHOXが脚光を浴びる。シンプルな円柱状の新生SHOXシステムとFLY WIRE搭載のブーティアッパーを組み合わせたSHOX GRAVITYは、まさにコンテンポラリーかつ洗練された機能美の結晶。これを一つのきっかけに19年にはNIKE SHOXの再評価が加速する。COMME des GARCONのコレクションではモードの解釈でブラッシュアップされたSHOX TLのカスタマイズモデルが登場した他、オリジナルの仕様を忠実に復刻したSHOX R4やSHOX TLが相次いでリリース。オリジナル当時のSHOXを知る世代にはほろ苦さと懐かしさを、SHOXを知らない世代には斬新な印象を与えたことだろう。

fig.10 Nike Shox Gravity (2018)

fig.11 Nike Shox TL CDG (2019)

 

ホワイトとメタリックシルバーで塗り分けられたレザーアッパーに先進性を主張するコメットレッドのコラムを搭載したSHOX R4は、エアマックス97にも通じるナイキの伝統的な勝負カラーで登場。他にもトリプルブラックをはじめ、海外市場では多彩なインラインカラーを展開中。加えて「ブラジルの至宝」ことサッカー選手のネイマールJr.(パリ・サンジェルマンFC所属)とコラボしたSHOX R4では、地元サンパウロの市場の光景にインスピレーションを得たと云う西瓜のカラーウェイが意外にも人気を博す。同様にネイマールのシグネチャーモデルではプラチナカラーのSHOX R4、更に漆黒のアッパーにゴールドのコラムを搭載したフルレングス仕様のSHOX TLまでラインナップ。

かつてスニーカーファンの歓心を得られなかったSHOXシリーズのメカニカルな造形がむしろ好感される現在のトレンドは、やはりダッドシューズの影響下にあると言って間違いない。具体的には、NIKE SHOXの先進性に相応しい近未来の造形美を表現したメタリックシルバーのアッパー然り、_コラムの支柱がスプリングの役割を果たすチャンキーなミッドソールもまた然り。ただ願わくば、NIKE SHOXの革新的なデザインを支持する声が一過性のトレンドに左右されることなく、先進的なテクノロジーに対する正当な評価へと繋がってくれることを……。

 

 

 

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2000年発売のオリジナルカラーを踏襲したSHOX R4の復刻版。メタリックシルバーの精悍なアッパーにコラムが鮮やかに映えるコメットレッド。ナイキの伝統と革新を融合したNIKE SHOXシリーズのアイコン。

 

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NIKE SHOX R4 / NEYMAR JR.詳しくはこちら

ネイマールJr.のシグネチャーモデルとして登場したSHOX R4は「クレイジーなカラーが好き」と云う本人の意向を反映し、サンパウロの市場に並ぶ西瓜をイメージした極彩色のスペシャルエディション。

 

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同じくサッカー大国・ブラジル代表にしてパリ・サンジェルマンFCのエース、ネイマールJr.の名を冠したSHOX R4。プラチナカラーのアッパーに白いスウッシュを刺繍した端正なビジュアル。

 

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ネイマールJr.のロゴをインソールにプリントした最新リミテッドエディション、SHOX TLはミッドソールをコラムで占拠したフルレングス型。ゴールドのコラムが際立つ漆黒のトータルSHOXシグネチャー仕様。

※こちらの商品(NIKE SHOX R4 / NEYMAR JR.)は、13日9時からの販売となります。

販売については別途ブログをご参照ください。

 

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岸 伸和

Nobukazu Kishi Exclusive


  1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。

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