27. ナイキバスケットボールの永久定番、エアフォース1の端正なフォルムがもたらす多様性とその形態

 ナイキの歴史的なアイコンとして現代に受け継がれるコートシューズと言えば、エアフォース1がその筆頭だろう。起源は1982年にまで遡る。そこから更に3年前の1979年に発表されたナイキエアクッショニングシステムを初めてバスケットボールシューズに搭載した記念碑的な一足がエアフォース1である。ブルース・キルゴアがデザイナーを務めた最高傑作の一つだ。飽きのこない洗練されたフォルムのハイトップは1982年生まれで、ローカットは翌年以降に追加される。ホワイトレザーのアッパーにサイドパネルをメッシュで切り替え、つま先にはベンチレーションホールなし、ベルクロ留めのアンクルサポートストラップを標準装備した初期型のデザイン。かたや、グリップ性能に優れたピポットパターンをアウトソールに採用し、ミッドソールにカプセル型のフルレングスエアバッグを内蔵したエアフォース1共通のソールユニット。これがバスケットボールシューズの歴史を変える、異次元のクッショニングを提供した。

fig.01 Nike Air Force 1 High OG (1982)

fig.02 Advertisement for Nike Air Force 1

 80年代初頭のバスケットボールシューズに搭載可能な最先端テクノロジーを凝縮したエアフォース1は、ハイトップに次いで間もなくローカットを発売。ところが1986年リリースのエアフォース2の登場により、既にエアフォース1の役割は終わったとばかりに一旦マーケットから締め出されてしまう。たしかにパフォーマンスモデルとしてはその座を後継モデルに譲ったが、コートを離れたストリートにおいてもエアフォース1の支持は昂まっていた。そこで、バスケットボールファンとその周辺の需要を見込んだボルチモア地区の3店舗がナイキに対しエアフォース1の再販をリクエスト。これに応えてナイキは1200足の販売を条件に再生産を開始。90年代以降はライフスタイルの定番という新たな位置付けでエアフォース1の販路を拡大すると共に、1994年にはハイトップ、ローカットに次ぐ、第3のAF1としてミッドカットを発表。またフルグレインレザー以外にヌバック、キャンバス、パテントといったバリエーションを展開することで、エアフォース1のフィールドは無限の拡がりを見せ始めた。

fig.03 Nike Air Force 1 High / Mid / Low

 その後、エアフォース1が如何にして増殖を繰り返してきたかは詳しく言う迄もないだろう。シーズンごとにアップデイトするカラーバリエーションは勿論、HTMレーベルより登場したクロコダイルのエンボスやコントラストステッチのローカット、レブロン・ジェームスやエミネムの_スペシャルメイクアップ、SUPREMEなどブランド共同企画のコラボモデル、リカルド・ティッシ共同製作のカプセルコレクション……といった具合に、エアフォース1はあらゆる機会を捉えて、クリエイターのニーズに適うベースモデルとして存在感を発揮した。

fig.04 HTM Air Force 1 Low “Crocodile” (2004)

fig.05 Nike Air Force 1 Mid “NBA” Supreme (2018)

fig.06 Nike Air Force 1 Collection Riccardo Tisci (2018)

 近年では、マテリアルやフォルムをアップデイトすることで、より一層バリエーションの幅を拡げている。フライニットやルナロンソールを導入したハイブリッドモデル然り、全天候型のダックブーツやユーティリティも然り、ミリタリーブーツにインスピレーションを得たSFエアフォース1もまた然り。加えて、コンセプチュアルなカスタムメイドに発展したベルリン発のACRONYM共同企画のルナフォース1、更に極め付けはヴァージル・アブロー共同製作のTHE TENシリーズだろう。もはや原型を留めず、全く新しいスタイルへと刷新すら遂げるエアフォース1だが、その限界に挑むようなカスタムメイドがインラインのデザインにも変革をもたらし始めている。

fig.07 Nike Air Force 1 Low Ultra Flyknit (2016)

fig.08 Diversity of Nike Air Force 1 (Recent Years)

fig.09 NikeLab Lunar Force 1 Acronym (2015)

fig.10 Off-White x Nike Air Force 1 Low (2018)

 今回ピックアップした4型のエアフォース1は、伝統的なスタイルにディテールをモダナイズしたトーナルホワイトのAF1 07 LV8、元NBA選手のラシード・ウォーレスのシグネチャーを復刻したレトロ、ウィメンズならではのボリューム感とチャンキーソールを融合したセージ、ベルクロストラップと連動したワイヤーを視覚化するN354シリーズのAF1タイプというラインナップ。オリジナルの様式をクリーンにブラッシュアップした定番からウィメンズにフォーカスしたメタモルフォーゼ、最新コンセプトによるデザインコンシャスな進化系まで出揃ったエアフォース1の最前線。

fig.11 Nike Air Force 1 High Sheed (2001)

fig.12 Nike WMNS Air Force 1 Low Sage (2017)

fig.13 Nike AF1-Type (2019)

 果たして1982年のデビュー当時、エアフォース1が現在の勢力を築き上げることを想像できた人は居ただろうか。紛れもないバスケットボールシューズでありながら無駄のない洗練されたシルエットは巨大なポピュラリティを獲得する一方で、どんなアレンジも受容する汎用性を秘めていた。ナイキが誇るスニーカーカルチャーの歴史的なアイコンは今なお終わりなき多様性の道を歩み続けている。

 

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1982年オリジナル発売、ナイキエア初搭載のバスケットボールシューズ、エアフォース1はクラシックな様式美はそのままにディテールをブラッシュアップしたコンテンポラリーモデル。ホワイトレザー ーのアッパーにホワイトソールを装着したプリミティブな永久定番。

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1980年代初頭のオリジナルに忠実なシルエットを再構築したエアフォース1レトロより、2001年にラシード・ウォーレスのシグネチャーモデルとしてリリースされたパテント仕様のハイカットが復刻。ヒールサイドに彼のプレースタイルを刺繍したリミテッドエディション。

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ナイキがウィメンズ市場を開拓すべく2017年にリリースしたエアフォース1セージは、ウィメンズ専用の縫い目の少ないアッパーとボリューム感のあるチャンキーソールを組み合わせた進歩的なデザイン。モノトーンカラーのシックなニューモデル。

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ナイキの伝説的なアスリート、スティーブ・プリフォンテーンの記録にちなんだN.354シリーズより、ヒールのベルクロストラップと連動したシュータンのストリングが足全体をホールドする進化系エアフォース1。スウッシュの控えめな主張もシリーズの特徴。

 


岸 伸和

Nobukazu Kishi Exclusive


  1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。

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