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18. マックスエアと対を為すナイキの薄型・軽量・高反発ユニット”ZOOM AIR”初搭載モデルが甦る!

18.
マックスエアと対を為すナイキの薄型・軽量・高反発ユニット”ZOOM AIR”初搭載モデルが甦る!
NIKE AIRがエアユニットの最大化とビジブル化という革新を遂げた1987年発表の初代エアマックス以降、マックスエアは年を追うごとに容量を増し、ビジブル領域を拡張することで、クッショニングの向上とソールユニットの軽量化に貢献してきた。その劇的な進化は約10年間のエアユニットの形状からも一目瞭然。ミッドソールの側面に穿たれたエアウィンドウを拡げたエアマックス90、トランスルーセントラバーの導入で180°ビジブルを実現したエア180、ブローモールド製法により270°ビジブルへと進んだエアマックス93、更に気圧の異なるチャンバーで構成されたデュアルプレッシャーエアに加えて、前足部にマックスエアを搭載したエアマックス95からトータル世代へ突入。遂にはエアマックス97がフルレングスビジブルエアを達成する。こうしてNIKE AIRシステムの主導的なテクノロジーとして常に進化することを義務付けられ、ブランドの最高峰に君臨したのがマックスエアだった。
fig.01 Nike Air Max & Max Air Unit 1987-96
かたや、ズームエアは1995年発売のエアズームLWPに搭載されたテンシルエアを起源とし、のちに96年発売のエアズームアルファに搭載された際、正式に「ズームエア」へ名義変更されたNIKE AIRシステムの新形態。薄型・軽量・高反発を特徴とする全く新しいエアユニットだった。圧縮形成された薄いプレート状のエアバッグは、内部に編み込んだファイバーが着地のたびに縮んで衝撃を吸収し、素早く元の状態へ戻ろうとするエネルギーが爆発的な反発力を生み出す仕組み。エアズームアルファの場合、人間工学に基づき_4つのポッドで構成されたアナトミカルポジションズームエアを搭載し、より優れたクッショニングとトラクションを提供した正真正銘のパフォーマンスモデルである。このソールユニットは1997年発売のエアズームスピリドンやそのハイブリッド仕様のエアズームスピリミックなどに継承された。
fig.02 Nike Air Zoom LWP (1995)
fig.03 Nike Air Zoom Alpha (1996)
fig.04 Nike Air Zoom Spiridon (1997)
fig.05 Nike Air Zoom Spirimic (2017)
Nike Airシステムに新たな方向性を示したズームエアの登場は、エアユニットの最大化こそ正義というマッチョな主義を掲げるマックスエアに対抗するオルタナティブなイノベーションであり、より細分化が進む競技やアスリートのニーズを具現化するのに欠かせないテクノロジーとなった。事実、1999年始動のアルファプロジェクトでもその傾向は顕著で、革新的なプロダクトの研究及び開発を旨とするスペシャルラインの第1弾が、ズームエアのビジブル化を達成したエアズームシチズンであったことからも裏付けられる。これに次いでリリースされたエアズームサイズミックも同様にビジブルズームエアを搭載していた。
fig.06 Nike Air Zoom Citizen (1999)
fig.07 Nike Air Zoom Seismic (1999)
かくも偉大なイノベーションであるズームエアの初搭載モデルが待望の復刻を遂げ、新たなカラーバリエーションを展開するに至ったからには、そのラインナップに注目すべきなのは当然だろう。ネイビーとホワイトを組み合わせた爽快な配色がエアズームアルファの純然たるアスリートギアとしての存在感を主張する一方、ストリートのトレンドを意識したものであることは間違いない。
NIKE AIR ZOOM ALPHA
薄型・軽量・高反発に特化したテンシルエアを起源に持つズームエア初搭載の記念碑的なモデル、1996年オリジナルのエアズームアルファの復刻版。流線的なレイヤー構造のアッパーにアナトミカルポジションズームエアを搭載したハイテク仕様が90年代のナイキデザインを象徴する。
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岸 伸和
Nobukazu Kishi Exclusive
1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。
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