UNDEFEATEDが創業以来、これまでに手掛けてきたフットウェアのコラボレーションをアーカイブするスペシャルコンテンツ。スニーカー市場を沸騰させた超レアなプレミアモデルから玄人趣味のアレンジが際立つコラボまで順次ラインナップ。それぞれ時代のカラーを映してきたUNDEFEATED別注の軌跡をここに綴り、永久保存版のカタログを編纂する。

ARCHIVES by UNDEFEATED
Vol.4

NIKE AIR MAX 97 UNDFTD

UNDEFEATEDがこれまで2度に渡って各2色ずつ計4型のエクスクルーシブを展開してきたナイキエアマックス97。流線型のリフレクターを積み重ね、レーン状に分割された独特のアッパー構造を活かし、そのミドルレーンにUNDEFEATEDのベーシックロゴがリピートする織りネームをパイピング処理した特別仕様は、本コラボレーションを象徴するデザインワークとして広く認識されている。第1弾はエアマックス97の生誕20周年という節目に合わせ、2017年リリースされたモノトーンのソリッドな配色にイタリアの老舗メゾンを彷彿させる赤白緑の織りネームを組み合わせた仕様。UNDEFEATEDにとっても15周年のアニバーサリーイヤーを迎え、キレのあるクリエイティブを連発していた時期の作品だけにその完成度の高さは一目瞭然だろう。次いで第2弾は3年後の2020年リリース、ブラックにオリーブ、オリーブにブラックをそれぞれアクセントに利かせたエアマックス97である。特に黒無地に蛍光イエローの挿し色と白いミッドソールで構成されたブラックは、ホリデー97発売のオリジナルカラーをどこか彷彿させる。

 エアマックス97が発表されたシーズン、フォール97当時は依然としてハイテクスニーカーブームの余韻に浸る一方、水面下ではクラシック陣営の巻き返しが始まろうとしていた混沌の時代。ちょうど2年前のフォール95からリリース開始、前足部にビジブルエアを搭載し、ミッドソール全体のマックスエア化を実現したエアマックス95を以て起源とするエアトータルマックスの第3世代に該当するのがエアマックス97である。

 ここではエアトータルマックスにフォーカスし、各世代のエアシステムについて確認したい。まず前提として、フォール94発売のエアマックス2(square)に搭載されたマルチチャンバーエアもしくはデュアルプレッシャーエア(気圧の異なるエアブロックを組み合わせ、かかとの外縁部と中心でクッショニングの効きを調整したもの)を受け継ぐところから始まる。

エアトータルマックス第1世代

エアマックス95=シーズンはフォール95~レイトスプリング96(4期)。ミッドソールには、マルチチャンバーエア+フォアフットビジブルエア搭載。トータルマックス時代の幕開けを告げたエアマックス史上最大のエポックメイキング。

エアトータルマックス第2世代

エアマックス96=シーズンはフォール96~ホリデー96(2期)。エアマックス96 II=シーズンはスプリング97~レイトスプリング97(2期)。ミッドソールには、マルチチャンバーエア改(着地エリアを斜め後方へ移動した進化版)+フォアフットビジブルエア搭載。偉大なるエアマックスの功績を受け継ぎマイナーチェンジに留めたハイパーエディション。

エアトータルマックス第3世代

エアマックス97=シーズンはフォール97~ホリデー97(2期)。エアマックス98=シーズンはスプリング98~レイトスプリング98(2期)。ミッドソールには、フルレングスマルチチャンバーエア(気圧の異なるチャンバーを前後足部で一体化した新様式)搭載。前足部のビジブルエアを一挙に飲み込み、巨大化したフルレングス仕様のマックスエア。

 かつて全世界のスニーカー市場を席巻する勢いでエアマックスの人気を確定したエアマックス95は、ランニングに限らずバスケットボールやクロストレーニングといった課外カテゴリーのマックスエア搭載機にも神通力を及ぼし、結果的にハイテクにあらずんばスニーカーにあらずといった風潮まで囁かれた。ファーストカラーのネオンイエローは勿論だが、セカンド以降も発売されるや即完売という人気ぶりで、レディフットロッカー別注やレザー仕様のリミテッドエディションにもマーケットは沸騰。フォール95に始まった初代エアトータルマックスは20世紀最大の金字塔を打ち立てた。自ずと市場原理が働くプレミア価格は天井知らずの高騰ぶりで、のちには悪徳業者によるフェイクが流通する事態にまで発展した。

 4シーズンに及んだエアマックス95の季節が終わり、満を持して登場したエアマックス96は、最初こそ前作の余韻もあって注目されたが、セールス的にはエアマックスにおけるアッパーの重要性を痛感させられる結果に。とは言え、マックスエアを搭載したエアマックステイルウィンドやエアモアアップテンポといった関連商品が裾野を拡げ、ハイテクスニーカー全体の市場規模は拡大した。次いで、ソールユニットを共有するエアマックス96 IIが一転、アスレティック様式の機能性を主張したアッパーに刷新することで挽回を試みたが、これまた失敗。フォール96発のエアトータルマックスは第2世代にして人気の凋落が顕著に。

 そして、前後一体型のマックスエアを搭載すべくソールユニットをフルモデルチェンジすると共に、前衛的なコンセプトでアッパーを再構築したエアマックス97は、エアトータルマックス第3世代にして大いなる飛躍を遂げた。日本が世界に誇る科学技術の結晶である新幹線をモチーフにデザインされたアッパーは、流線的なレーンをナイロンメッシュやリフレクターテープのレイヤーで構成する斬新さ。近未来のスニーカー像を彷彿させるフォルムは、アスリートからファッションユーザーまで幅広く支持された。にも関わらず、フォール97とホリデー97の2シーズンでインラインの展開を終了。再びソールユニットを共有したエアマックス98が系譜の担い手を引き継ぎ、レイヤーを複雑に重ね合わせた新型アッパーのマイナーチェンジ仕様ながら、全体のバランスの良さが功を奏して、エアトータルマックス第3世代の後期型として大役を果たしている。

 こうしてフォール97発のエアマックス97は、スニーカーヘッズが蠢くストリートにおいても熱烈な支持を得て、エアマックス95の夢よ再びといった期待を膨らませはしたが、実際のところコアコンシューマーの厚みにおいてはエアマックス95に及ぶべくもなかった。またハイテクスニーカーのムーブメント自体が失速し、マニアックなテクノロジーに傾倒する一部を除いてシーンの停滞したムードは否めなかった。それでもなお、エアマックス97ことエアトータルマックス第3世代の革新性は紛れもない事実であり、その評価は00年代以降、エアマックスの歴史を紡いだエポックメイキングとしてエアマックス1、エアマックス90、エアマックス180、エアマックス95などと共にクイックストライクやリミテッドエディションを展開していることからも明らかである。UNDEFEATEDが2017年と2020年の2度に渡ってコラボレーションを展開したエアマックス97のテクノロジーに関する革新性やシリーズ屈指の人気モデルであることに疑問を差し挟む余地は無さそうだが、それ以外にもクリエイティブな表現を受け入れる懐の広さにおいても支持されたのではなかろうか。UNDEFEATEDのコラボ遍歴を見渡してもエアマックス97がその完成度においても突出しているのは間違いない。


岸 伸和 – Nobukazu Kishi Exclusive
1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。

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