UNDEFEATEDが創業以来、これまでに手掛けてきたフットウェアのコラボレーションをアーカイブするスペシャルコンテンツ。スニーカー市場を沸騰させた超レアなプレミアモデルから玄人趣味のアレンジが際立つコラボまで順次ラインナップ。それぞれ時代のカラーを映してきたUNDEFEATED別注の軌跡をここに綴り、永久保存版のカタログを編纂する。

ARCHIVES by UNDEFEATED
Vol.6

Reebok QUESTION MID
UNDFTD

 シャキール・オニールのSHAQ ATTAQ(シャックアタック)やショーン・ケンプのKAMIKAZE(カミカゼ)シリーズなどNBAのトッププレイヤーのシグネチャーモデルを手掛けていたリーボックが1996年にルーキーイヤーを迎える新人と契約した。アレン・アイバーソン。ジャージタウン大学を2年で中退し、実家の貧しい家計や病気の妹を支えるため、NBA入りを表明。ドラフト全体1位でフィラデルフィア・76ersに入団した。NCAA時代から最高のポイントガードと評されてきたアイバーソンだが、彼と契約を交わしたリーボックには周囲から「本当に大丈夫なのか?」という疑問の声が寄せられていた。

 と言うのも、アイバーソンの生い立ちに理由がある。1975年バージニア州ハンプトン生まれのアイバーソンは実父が逮捕され、継父もドラッグ所持で逮捕される等、水道や電気を止められた貧しい家庭で少年時代を過ごした。地元の高校へ進学すると、バスケットボールとアメリカンフットボールの2種目でバージニア州の代表選手に選出。最終的にはバスケットボールに専念する彼の元には全米の大学からスカウトが訪れ、名門ケンタッキー大学への進学がほぼ決定していた。ところが、ボウリング場での白人グループと黒人グループの乱闘騒ぎに巻き込まれて逮捕、裁判で懲役15年(実刑5年・執行猶予10年)の有罪判決が下され、進学の話は白紙撤回。この乱闘事件では3名の被害者がいずれも白人で、背景に人種差別による陰謀の存在が疑われる等、全米の注目が集まり、裁判がやり直される中、アイバーソンは5ヶ月の服役後に州知事の恩赦で釈放(のちに無罪確定)。だが、既に奨学金を申し出る大学は皆無だった。母親がアイバーソンの服役中にジョージタウン大学バスケットボール部ヘッドコーチのジョン・トンプソンに懇願し、奨学金を得て同大学へ進学できることに。大学時代には1年で新人王、2年でオールアメリカン選出と活躍したが、実家の窮乏を救うため一刻も早いプロ入りを希望したアイバーソンは、1996年のドラフトに登録された。

 またアイバーソンにもう一つネガティブな要素を見付けるとすれば、身長183cmというサイズだろう。当時は身長213cm以上のビッグマンが試合を支配していたNBAにおいて、30cm以上も背の高いプロ選手を相手にマッチアップして、果たして活躍できるのだろうかという疑問だ。
 更にはアイバーソンの素行についても問題視された。NBA1年目で新人王を獲得したとは言え、ルーキーにも関わらず、マイケル・ジョーダンに堂々と1対1を仕掛け「ジョーダンであっても尊敬しない」というコメントが物議を醸す。のちに「コート上で尊敬の念を持ちすぎるのは良くない。コートを離れれば尊敬している」と釈明した。
 こうしたアイバーソンにまつわる「悪童」のイメージがリーボックへの疑問となって押し寄せたのだが、リーボックはその疑問を逆手に取って、アイバーソンの最初のシグネチャーモデルを「QUESTION」と命名。その翌年には「THE ANSWER」というシグネチャーモデルを発売し、リーボックに寄せられたアイバーソンに関する疑問への回答とした。その後のアイバーソンの活躍は言う迄もなく、NBA史上最も背の低い得点王に輝くこと4回、シーズンMVPやオールスターMVPを獲得する等、伝説的なプレイヤーとして讃えられているが、ルーキーイヤーには彼の将来性に疑問を投げ掛ける向きがあったのも事実なのだ。

 リーボックはそんなアイバーソンのために先進テクノロジーを凝縮したバスケットボールシューズを提供することで期待の大きさを示した。自然界で最も安定した形状とされるヘキサゴン(六角形)を繋ぎ合わせたハニカム構造による衝撃吸収システム、ヘキサライトはあらゆる衝撃をバランスよく分散することでクッショニングを極めたテクノロジー。インスタポンプフューリーをはじめ当時のハイテクモデルの多くに採用され、信頼性の高かったヘキサライトをミッドソールに搭載したQUESTIONはアイバーソンの活躍と共に人気を集めていった。ちなみに翌年リリースされたシグネチャー第2弾のTHE ANSWERでは、ミッドソールのチャンバー内を空気が移動することで衝撃を吸収するDMXテクノロジーが採用され、ヘキサライトは惜しまれつつも一線を退いた。
 そのヘキサライト搭載のQUESTIONのデビュー10周年に当たる2006年、UNDEFEATEDより発売されたリミテッドエディションは、ティールブルーのヌバックをベースにピンク、オレンジ、ネオンイエローの挿し色を組み合わせたマルチカラー仕様。アッパーサイドに”IVERSON”及び”96″のロゴをプリントし、クレイジーな配色で彩ったUNDEFEATED別注は、スニーカーヘッズ垂涎の人気を博し、プレミアモデルの仲間入りを果たした。


岸 伸和 – Nobukazu Kishi Exclusive
1972年生まれ、神奈川県出身。雑誌『Boon』(祥伝社) にてライターとして活動を開始。90年代のスニーカー全盛期には同誌のスニーカー特集や別冊の多くを担当、以降ライフワークの一環としてスニーカーを嗜んでいる。近年はアパレルブランドのカタログやWEBコンテンツの制作ほか、ブランドやクリエイターの活動をアーカイブした書籍を手掛ける。

SOCIAL MEDIA